8月の最終週から9月頭にかけて、シリコンバレーエリアとスタンフォード大学キャンパスを訪問してきました。

San Francisco到着初日は、同市内らしく、霧模様で気温も低く、真夏の蒸し暑い東京との寒暖差に出迎えられました。一方、わずか1時間強程、内陸に向かって南にドライブした地であるStanford大学とその周辺の市であるPalo Alto(テスラ本社在)、Menlo Park(Facebook本社在)、Mountain View(Google本社在)、Cupertino(Apple本社在)は、強い日差しの下で乾いた空気が広がり、真夏そのものでした。

今回の訪問は、スタンフォード大学での研修プログラム作りために、キャンパスを訪れることが主な目的でした。デザインシンキング発祥の地であるInstitute of Design at Stanford(通称 d.school)のイノベーターズマインドセットを学びながら、実践的英語コミュニケーション力を高める、日本人ビジネスパーソン向けのプログラムの骨格が見えてきました。期間は8日間程度になる見込みで、来年の夏の実施に向けて、これから細部を詰めていく計画です。

当地訪問の様子を、何回かに分けて、本ブログで紹介していこうと思います。今回は、まず、スタンフォードキャンパスの変貌ぶりについて書きます。

私がスタンフォード大学をはじめて訪れたのは、大学生の時に参加した、1か月間の短期留学プログラムの時でした。グーグルが創業される以前の当時、スタンフォードの周辺には、すでにシリコンバレーを代表する企業群が数多く存在していましたが、現在のように、私たちの生活により身近な存在である、スマートフォンやインターネット関連サービスを提供するスタートアップ企業は、まだまだ少なく、学生の私にとって、シリコンバレーという言葉は、正直あまりピンとくるものではありませんでした。
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当時のキャンパスの印象は、とにかく広い。
ファーム(=農場)というニックネームで呼ばれることからも、スタンフォードのキャンパスの規模は、けた違いであることは良く知られています。キャンパス内を、マウンテンバイク、ローラーブレード、車で走り抜けても、果てしない広さです。東京ドームが700個入るという、その敷地は、広大なキャンパスと表現するレベルではありません。私の記憶では、青空の下、のどかで、のんびりとした空気の流れるキャンパスのなかで、学生たちは、大学生活を送る最高の空間というものでした。
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私にとって、はじめて見るアメリカの大学のキャンパスであったため、これがアメリカの大学のスタンダードか、と勘違いしてしまいました。しかし、もともと日本と比べて、キャンパスの広いアメリカの大学の中でも、スタンフォードの環境の良さは、比較にならないものです。そんなことも知らない自分は、すっかりこれがアメリカの大学の代表例だと、すっかり勘違いをしてしまいました。

そして、本題である、スタンフォードキャンパスの変貌ぶりについてです。はじめて訪れて以来、数多く、同キャンパスを訪れているものの、やはり、大きく変わったという印象を受けています。それは、キャンパス内には、土地がふんだんに余っていますが、年々、校舎が増え、景色が毎年変わっていくのです。
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特に、今回感じた印象は、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)のキャンパスと共通する、多額の資金の匂いです。つまり、それは、産業界との結びつきを意味しています。余談ですが、ハーバードは、元々、チャールズ川の北側にあるケンブリッジ市に広がっていましたが、新たな校舎を建設するための土地が限られているため、チャールズ川の南側にあるボストン市の敷地を購入し、南に広がってきています。なかでも、ハーバードの経営学大学院であるHBSは、ボストン側に広大なキャンパスを有し、豊富な資金をバックに、設備の整った校舎が立ち並んでいます。ハーバード生の間でも、ビジネス・スクールのキャンパスに踏み入れると、どこか、リッチな空気を感じると言われています。
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今回、スタンフォードのキャンパスを訪れて感じた空気も、まさに、同じものです。以前は、シンプルに、広大で、のんびりした空気の漂う、カリフォルニアの特別なキャンパスというものでしたが、今は、ここに、資金の匂いがプンプンしていました。周辺の企業や卒業生からの多額の寄付により、新たな校舎が建てられていく様は、スタンフォードと、テクノロジー業界をはじめとする産業界との強い結びつきによるものだと、肌で感じることができます。

グーグルの本社がキャンパスと呼ばれる理由は、同社の2人の共同創業者が、出身大学であるスタンフォードの広大なキャンパスをイメージして、職場のコンセプトを作り上げたことからだと言われています。テクノロジー企業のトレンドや、働き方改革に代表されるような、職場のあり方を考えるうえでも、スタンフォードのキャンパスを訪れることで、多くのヒントを得られると言えるでしょう。

ハーバード留学中に、アメリカ東海岸から、西海岸を訪れたときの印象よりも、今回のように日本から訪問するときの方が、この違いを敏感に感じ取れるというメリットがあると、強く思いました。数年間、同大学に所属して、じっくり腰を据えて学ぶことで得られるものとは違い、短期の間、同大学のキャンパスに滞在し、研修を受けることで吸収できる内容は、より濃密なものになると考えています。

また、次回以降、続きを書いていきたいと思います。